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2025年 ブルーリボン・ローレル賞選定車両

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ブルーリボン賞:西日本旅客鉄道株式会社 273系

西日本旅客鉄道 273系
写真:鉄道友の会

特急「やくも」として経年40年を超えた振子式特急形電車381系の後継として開発された新形式車です。デザイナーとJR西日本社員を交えたワークショップでデザインを構築し、既存特急形車両とは異なる独自性が特徴です。
外装は「沿線の自然・景観・文化・歴史を尊び、お客様と交感する色」でオリジナル色の「やくもブロンズ」に「モダンに八雲立つ、伝統を継承」するシンボルマークを配置しました。内装は「山陰の我が家のようにくつろげる、温もりのある車内」のため、グリーン車は積石亀甲模様で暖色系の、普通車は麻の葉模様で寒色系の座席とし、木目調の壁に間接照明です。さらに普通車の座席間隔は新幹線と同じ1040mmとし、新たに2・4人用セミコンパートメントやフリースペースを設け、車椅子スペースは最新の移動円滑化基準に対応しました。
編成構成は片台車駆動の電動車4両です。車体はアルミダブルスキンで、各部の衝突対策は既存車を踏襲し、車体断面は車体傾斜と重心低下への対応で屋根は低く、側面の上下を絞り込んだ形状で、貫通形高運転台の先頭部は、271系を基本に断面に合わせて少し形状が変わり、灯具の配置や塗色で新しい印象です。
鉄道総研、川崎車両と新たに開発した振子制御装置は、線路形状を登録したマップデータと、走行速度やジャイロセンサの測定値から高精度の位置認識を行い、応答性を向上させた車体傾斜用アクチュエータとともに、線路形状に合わせた最適な傾斜制御で乗心地を向上しています。
駆動系は、フルSiCのインバータで220kWの全閉型誘導電動機2台を制御しています。補助電源装置もフルSiCの出力75kVAで、各車の出力を並列接続して、故障時も運行継続可能な構成です。ブレーキ系は回生併用の電気指令式で、台車単位の制御です。制御指令やモニタなどを行う車両情報制御システムは伝送速度100Mbpsのイーサネット方式です。この他、脱線などを検知する車両異常挙動検知システムなどにより安全性と信頼性を確保しています。

ローレル賞:近畿日本鉄道株式会社 8A系

近畿日本鉄道 8A系
写真:鉄道友の会

近畿日本鉄道8A系は、同社にとって24年ぶりとなる新系列一般形車両です。1960~70年代に製造され、多数が活躍している一般形車両の更新を目的としています。まず奈良線、京都線用として4両編成で登場、2024年10月から運転を開始しました。今後、大阪線、名古屋線、南大阪線などへの展開が予定されています。車両形式は新たに5桁の付番体系を制定し、最上位の桁が主に運用線区、次の「A」が車両シリーズを表しています。
車体は同社の一般形車両では標準の20m級4扉です。裾絞りの無い車体幅2,800mmを初めて実現したアルミ製構体としており、運用線区では限界拡幅工事を行っています。前頭部は八角形をモチーフとした特徴的な造形であり、下部には斜めに配したLED前照灯、上部には大型の種別行先表示と標識灯を備えています。また、併結運転を前提とした貫通扉と転落防止外幌を設けているほか、オフセット衝突に対応した構造としています。カラーは赤と白のツートンを継承しつつ、新たな色合いと塗り分けパターンを採用しました。
客室はドア間にL/Cシートを装備していますが、ロング・クロス各モードをドア間のブロックごとに設定を可能とし、混雑状況に応じた柔軟な運用が可能です。また、各車の中央ドア脇の2カ所には、縦横両方向に座ることが可能な座席を備えたスペース「やさしば」を設けベビーカーや大型荷物など多様なニーズに対応しています。ドア上には国内最大級で42インチハーフの大型LCDによる車内案内表示器を設けています。客室デザインは「日常の華やかさ」をコンセプトとし、同社車両の新たな標準として在来車の更新工事にも水平展開していることも特徴です。
制御装置はハイブリッドSiC素子によるインバータ制御、ブレーキ装置は抑速・回生付き電気指令式としています。さらに、読替装置とブレーキ管の引き通しによってさまざまな制御方式・ブレーキ方式の在来車との柔軟な併結運用を実現しています。
8A系は会員による投票において支持率が高く、また、同社の次世代を担う一般形車両として、極めて高い運用の汎用性、柔軟性と高レベルな客室サービスを実現しつつ、新たな標準化を目指した車両として高く評価し、ローレル賞に選定しました。

ローレル賞:福岡市交通局 4000系

福岡市交通局 4000系
写真:鉄道友の会

福岡市交通局4000系は、空港線・箱崎線の1000N系置き換え用で、設計コンセプトを「一人ひとりにやさしい移動空間」とし、それを実現するための設計ポイントを、「質の高いサービス」、「静かさ」、「安全・安心の確保」、「省エネ・省メンテナンス」としています。
外観は切妻の前面に丸みを帯びた塗分けから車体側面上部のラインに続く「ブルー」に加え、側面窓周りに福岡空港の「空」をイメージした「スカイブルー」を配し、車内は明るい白色を基調に、貫通扉や袖仕切り、荷棚にガラスを使用して「すっきりとした開放感のある車内」としています。
車体はアルミダブルスキン構体とし、座席幅を1人当たり480mmまで拡大、手すりやつり手の増加、目線近くまで下げた荷棚等、快適で使いやすい車内空間としています。また、各号車に優先スペース(車いす・ベビーカー用)を設け、優先席は各号車端部に配置し、一部の黄色い優先席は座面の高い立ち座りしやすい座席としています。6号車前位に設けたフリースペースは、海側眺望を楽しめるよう大窓とし、両端に1人掛け腰掛を設け、山側は空港利用等の乗客のため、荷物置場を備えた2人掛け腰掛2組を設けています。これらのエリアは床面や壁にピクトグラムを表示し利用者に判りやすい案内をしています。
台車は空気ばね支持のダイレクトマウント式ボルスタ付台車で、これまでの防音車輪に加えて新たに片軸操舵機構を採用し、非常に静かな車内空間を実現しています。機器類は最新技術を積極的に採用し、特に主電動機には永久磁石不要な同期リラクタンスモータを世界で初めて本格採用し、従来車と比べ40%の省エネ化が図られています。車両統合管理装置は各車両の制御や3画面式の運転台表示のほか、地上システムへの情報伝送機能により、乗務員支援やダウンタイムの短縮、メンテナンスの効率化に活用しています。各ドア上には2画面一体の案内表示機能を備えた3画面の表示器を搭載。さらに、車内の安全性向上のため表示器の一部に搭載された車内カメラで常時映像が記録され、映像は非常通報操作などに連動し、運転台への自動表示、運輸指令での確認ができます。
シンプルな機能美の中に、新たなデザイン、技術をバランスよく搭載し、乗客の快適性に最大限配慮した次世代の地下鉄車両として高く評価し、ローレル賞に選定しました。

マスコミ向けに配布したニュースリリースは、下記からダウンロードできます。(内容は同一です)

2025年ブルーリボン賞・ローレル賞決定(PDF)

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