鉄道友の会

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2019年 選定作品の解説・選定理由

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単行本部門 久保ヒデキ「定山渓鉄道」北海道新聞社(2018)

本書は、大正7年の開業から昭和44年の廃止に至るまで、約半世紀にわたって札幌市民や観光客の足として利用された定山渓鉄道の歴史をまとめた書籍です。廃止後すでに半世紀が経って定山渓鉄道を知る人も少なくなってしまいましたが、本書では、地元の強みを活かして貴重な古写真を発掘するとともに、モノクロ写真のカラー化によってかつての姿を鮮やかによみがえらせ、さらに航空写真によって当時の痕跡を探し出すなど、わかり易い内容となっています。モノクロ写真の着色化は意見が分かれるところですが、往時を知らない世代でもその存在が身近に感じられるようにした編集上の試みとして評価されます。地方らしさが随所に感じられる出版物として、島秀雄記念優秀著作賞に選定しました。

単行本部門 風間克美「地方私鉄1960年代の回想」OFFICE NATORI(2018)

本書は、1960年代の全国100路線以上の地方私鉄を訪ね歩き、車両のみならず鉄道をめぐる人々の表情や、駅、施設などの情景を、心のこもる生き生きとしたカメラアイで写し撮った写真集です。これまでの記録の多くが「車両写真」中心である中で、一歩ひいて周囲の景観や生活を画面に取り込んだ写真は、時代の空気感を感じさせ、鉄道が日常生活と共にあった地域や時代を後世に伝える記録としても価値があります。また、ベテラン編集者の手慣れた手法により質の高い写真集に仕上がっており、個人のWebサイトから出発して出版に至った経緯や、老舗の鉄道出版社を発売元とすることによって、より多くの読者に普及させたことなどを高く評価し、島秀雄記念優秀著作賞に選定しました。

定期刊行物部門 山本直弘「駅ナンバリング考」(交友社『鉄道ファン』2017年12月号~2018年3月号掲載)

近年、外国人観光客の増加に対応するため、あちこちの駅にナンバリングが行われるようになりましたが、本作は著者が自らの目で確かめながら、会社や路線ごとの規則性を帰納法的に推察してまとめた連載です。こうした帰納法的な手法は、まさに鉄道趣味者の原点とも言えるもので、単にその規則性を推察するだけではなく、各鉄道会社や路線の事情や背景についても考察され、興味深い内容となっています。これらの知識に基づいて、外国の駅ナンバリングの情報や、独自の提案など、さらに考察を深めることに期待したいと思います。鉄道趣味者らしい視点と探求心によって生み出された著作として、島秀雄記念優秀著作賞に選定しました。

特別部門 「全国蒸気機関車配置表」(イカロス出版)の出版に対して

本書は、昭和6年、昭和13年、昭和19年、昭和24年、昭和30年、昭和34年、昭和44年の蒸気機関車配置表を復刻し、全盛時代から戦中戦後を経て衰退するまでの蒸気機関車について解説した書籍です。これまでの蒸気機関車史は、形式別にその歴史をたどったものが定番でしたが、本書では時代を区切ってその時代の全国の蒸気機関車の姿を明かにした点に特徴があります。また、単なる資料の復刻にとどまらず、巻末で年代ごとに各鉄道管理局・支社ごとの特徴について詳細な解説を加えています。一次資料が散逸する中で、復刻と解説によって貴重な資料を発掘し、後世に伝えた出版社の努力を高く評価し、島秀雄記念優秀著作賞特別部門に選定しました。

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