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2023年 島 秀雄記念優秀著作賞を決定 [2023.9.29]

鉄道友の会(会長・佐伯 洋、会員約3,000名)は、島 秀雄記念優秀著作賞選考委員会(選考委員長・小野田 滋)による選考のもと、2023年島 秀雄記念優秀著作賞として、下記の単行本部門3件、定期刊行物部門1件、特別部門2件の合計6件を選定することに決定いたしました。

単行本部門 (3件) 坂中真之『小坂森林鉄道』(上・下)、ブイツーソリューション(2019・2020)
稲葉克彦『京成/新京成100・126形』(上・下)、ネコ・パブリッシング(2022)
中田安治『写真集 叡山電車100年のあゆみ』、成山堂書店(2022)
定期刊行物部門(1件) 阿部貴幸「遊泉寺銅山専用鉄道とその車輌に関して」『鉄道史料』173号、鉄道史資料保存会(2022.7)
特別部門 (2件) 京都市文化財保護課『こんにちは京都市電―「京都市電関係資料」をひもとく』(京都市文化財ブックス第35集)(2022)の刊行および関連企画
鉄道博物館『鉄道の作った日本の旅150年』(2022)の刊行および関連企画

選定対象の解説、選定理由は下記のとおりです。

単行本部門 坂中真之『小坂森林鉄道』(上・下)、ブイツーソリューション(2019・2020)

 

本書は名古屋営林局の小坂(おさか)森林鉄道を徹底的に調査しまとめた成果です。著者は実物の森林鉄道車両の保存活動もおこなっている小坂森林鉄道研究会の理事で、地元で発見されたという貴重な現役時代の数多くの写真と共に、関連する資料も徹底的に調査をしており、記録性と資料性がとても高い内容となっています。また、著者が作製した図面による技術的な事柄についての解説もわかりやすいものです。さらに、小坂森林鉄道に留まらず森林鉄道全体のシステム的な基礎知識もわかり易くまとめられているため、かつて全国各地にあった木材を運ぶ専用の鉄道について知る上でとても良い参考書となっている点も特筆されます。これらのことから、本賞にふさわしい作品として選定いたしました。なお下巻については2022年に改訂版が刊行されています。

単行本部門 稲葉克彦『京成/新京成100・126形』(上・下)、ネコ・パブリッシング(2022)

 

書名となった車両は1927年に京成に誕生した鋼製電車です。戦後は新京成に転じてその輸送急増期の主力車両となり、更新工事などを経て1987年までの長い間活躍しました。本書はその生涯について紹介しているものです。研究手法は車両史研究の基本を押さえ、鉄道会社の図面や台帳に自己の調査記録を加え、またベテランファンや自己の撮影写真を記事に合わせてうまくとりいれ、車両や編成の変化を細部まで追求し解説しています。少年時代に親しんだ車両を後年体系的に研究していくという、鉄道研究の原点ともいうべき作品であり、また多くの研究者・趣味者の参考となる良書です。以上のことから、本賞にふさわしい作品として選定しました。

単行本部門 中田安治『写真集 叡山電車100年のあゆみ』成山堂書店(2022)

 

現在の叡山電鉄は、1925年の京都電燈による叡山電気鉄道平坦線(現在の叡山本線)と鋼索線(現在の京福電気鉄道鋼索線-通称・叡山ケーブル-)の開業にさかのぼりますが、本書はその百年目を迎えるにあたって、これまでの歴史を振り返った写真集としてまとめられました。著者は沿線に在住する鉄道愛好家として、幼少期からその姿を見守り続けてきましたが、本書では時代による沿線の変化や四季の情景が紹介され、筆者の多年にわたる蓄積が集約されています。叡山電車の魅力を広く一般向けに紹介した好著として、また、著者の長年の積み重ねが集大成された著作であることを高く評価し、本賞にふさわしい作品として選定しました。

定期刊行物部門 阿部貴幸「遊泉寺銅山専用鉄道とその車輌に関して」『鉄道史料』173号、鉄道史資料保存会(2022.7)

 

遊泉寺銅山専用鉄道は、明治末期に開業し、現在の北陸本線小松駅と遊泉寺銅山を結んで鉱石輸送を担っていた鉄道です。大正中期に廃止となり、その線路跡は白山電気鉄道(後の北陸鉄道小松線)の建設にあたって利用されたことが知られています。そこで使用された車両については、これまで詳細が不明とされてきましたが、本記事では、筆者が入手した古い数枚の絵葉書をはじめとして長年の研究成果である多くの貴重な資料を駆使して機関車を中心にその来歴を解明し、埋もれた歴史の発掘に成功しています。こうした資料の発掘・分析の手法、得られた成果は、趣味的な観点からの地方鉄道史・車両史研究の模範と評価できることから、本賞にふさわしい作品として選定しました。

特別部門 京都市文化財保護課『こんにちは京都市電―「京都市電関係資料」をひもとく』(京都市文化財ブックス第35集)(2022)の刊行および関連企画

 

2021年3月に京都市電関係資料877点が京都市指定文化財となりました。本書はその目録であると同時に、文化財指定を記念して開催された京都市歴史資料館の特別展の展示図録および、さまざまな観点から関係者が意義や背景を整理した記念シンポジウム等の記録としての性質を持つものです。1884年度から1980年度まで、およそ100年にわたる土木、電気、車両・運輸に大別された資料群は後世に受け継がれるべき貴重な記録です。鉄道事業廃止後の資料の保存が課題となる中、廃止後45年を経て市の文化財として指定したこと、ならびに膨大な資料を整理して目録化したことに対し、今後の資料保存の模範となることから、本賞特別賞にふさわしい業績として選定しました。

特別部門 鉄道博物館『鉄道の作った日本の旅150年』(2022)の刊行および関連企画

 

本書は2022年の「鉄道 150 年」を記念し、鉄道博物館で開催された同名の企画展の図録で、交通博物館時代からの収集資料を年代とテーマに分けて収録し、日本における鉄道と、鉄道を利用した旅の変遷について多様な項目を俯瞰的かつコンパクトにまとめているなど、資料性も高いものとなっています。特に、1945(昭和20)年8月15日終戦時の東北本線の整理ダイヤなど、これまで公開されたことがなかった貴重な資料も多く含まれています。また、車両技術や路線史、経営史ではなく「旅」という切り口であることは、鉄道趣味者だけでなく広い範囲の読者へ届く構成・内容となっており、企画展とともに本賞特別賞にふさわしい業績として選定しました。

島秀雄記念優秀著作賞および過去の選定作品についてはこちらをご覧ください。

報道発表資料(pdf版)

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